がんの手術や化学療法を行う際、口腔ケアを行うことで術後の肺炎予防や副作用による口内炎の発症を和らげることは以前より言われております。こういったことは周術期口腔機能管理と呼ばれ、その大切さはあらゆるところで科学的に証明されており、それを受けて政府も推進を促す施策をとっているところです。
しかしながらこの周術期口腔機能管理は全く機能しておりません。我々歯科医師会の有志たちはこれではいけないと思い、研修会を企画するのみならず、病院に働きかけて連携を促すよう努力しております。
にも関わらず全く広がる兆しはありません。この一番の原因は結局病院側にあります。
医科の方々にとってはいくらエビデンスがあると説明されたところで、口腔ケアが手術後の回復や化学療法などの副作用軽減に役立つというのとはまゆつば物に捉えられており、にわかに信じてもらえません。
ですからまず歯科のある地域の基幹病院でこの周術期口腔機能管理を行って、その実績を広くアピールしていただかないと信じてもらえず何も進まないのです。
この事は我々街の開業医がいくら束でかかっても、歯科のある病院が動いてくれないことには何も始まりません。
そこで我々はずっと歯科のある病院に対してこの周術期口腔機能管理をまず取り組んでいただくよう、働きかけを続けているところです。
しかし基幹病院の中にある歯科と言えば、ほとんどが口腔外科を専門で行っているところです。この口腔外科を専門とされる歯科医師の多くは、外科手術については興味を示すものの医療連携については関心を持ちたがりません。
しかしもう時代の流れは変わり、病院にいる口腔外科の歯科医師に対しての社会のニーズも様変わりしてきているのに早く気付いていただきたいです。派手な外科手術のニーズも多少はあるかも知れませんが、そんなレアケースはせいぜい各都道府県に数か所あれば十分なはずです。それよりもまずは病院内での医療連携をしっかり構築して、実のある周術期口腔機能管理を行えるようにすることは総合病院の中の歯科の役割として必須だと考えます。