この数十年で飛躍的に日本人のこどもの虫歯は減ってきています。
皆さま気付かないうちに歯がフッ素に触れる機会が多くなったことが、最も大きな原因だと考えます。
歯周病についてもかつては歯石付きっぱなしの方が大多数でしたが、最近ではこまめに歯科医院で歯石除去に訪れる方が増えてきたこともあって、徐々にではありますが重度の方は減ってきている印象を持ちます。
逆に近年、激増しているものがあります。
そのうちの一つは顎関節症です。
こちらについては今までたくさん書いているので、是非そちらをご覧ください。
もう一つはTCH(歯列接触癖)が引き起こす様々な症状です。
上記の顎関節症もその一つではありますが、それ以外にもたくさんあります。
歯の知覚過敏や舌の痛みや荒れ、詰め物の脱落、歯の破折、歯の神経の壊死など多くの障害を引き起こします。
しかし一つ大きな問題があります。
それは原因としてのTCHに対する診断が非常に難しい点です。
現在の歯学部教育では十分に教えられていませんし、きちんとしたエビデンスも全く不十分な分野です。
また保険診療においても診療報酬はほぼゼロで、せっかく素晴らしい臨床を提供している歯科医院を犠牲にしているという不条理な状態が続いています。
私がある程度診断・治療できるようになったのも、きちんと診断できない自分自身が歯がゆくて、ありとあらゆる先生のところに自ら足を運んで習いに行く積み重ねを続けてきたからです。
でもこんな歯科医師個人の努力だけに頼る医療では安定供給の面で考えると好ましいことではありません。
TCHに関するエビデンスがそろい、歯学部教育などで歯科医師に広く有効な知識・技術が伝わり、きちんと知識や技術に見合った診療報酬の設定がなされる状況が望まれるところです。