矯正治療の際、当院でもよく取り外しのできる装置を使います。
この取り外しができる装置はクラスプとよばれるパーツで歯に装置を固定することで口のなかで装置を安定させます。
しかしこの取り外し式の装置は圧倒的に小児で使われるのでクラスプは乳歯に掛けることが多いのですが、乳歯は歯の高さが低く引っかかりが少ないためこのクラスプの固定がどうしても甘くなりがちです。
こんな条件の中、取り外し式の矯正装置のクラスプには通常、アダムスクラスプと呼ばれるものがよく使われます。
少ない引っかかりでも比較的固定ができ、調整が容易で、製作コストもさほど多くかからない利点があります。
私はずっとこのアダムスクラスプでの矯正治療を長年行ってきました。
しかしケースによってはどうしても十分な固定が得られない場合があります。そんな時、クローザットクラスプというものを教えていただき一部のケースで導入いたしました。
このクラスプ、実際使ってみてとにかく固定する力がアダムスとは比較にならないくらい強いです。私はそれだけだと思っていたら、矯正装置の効き方自体も全然違ってきてびっくりしました。
そもそも床矯正装置は極端な傾斜移動を起こすのが欠点なのですが、このクローザットクラスプを使うと床矯正装置が飛躍的に安定するため傾斜移動がかなり改善されるのです。これにはびっくりしました。
本音では床矯正装置の全てにアダムスクラスプではなくクローザットクラスプを使いたいところです。
しかしこのクローザットクラスプ、製作にものすごく手間がかかるため装置の料金がかなり高くなってしまいます。またアダムスとくらべ調整もシビアです。故障も多く迅速に修理できる体制でなければなりません。
こういったところでこの話をすると、そんなにいいものなら多少値上げしてでもやってくださいと言われるのですが、実際に患者さんが矯正を始められるとなると多少の値上げも大きなクレームになり、そこの板挟みでとても迷っている今日この頃です。