昨今、マスコミが大騒ぎしてとり扱ったむし歯治療法の内で3Mix-MP療法というものがございます。
林歯科診療所においては開院以来、この治療法は一切採用しておりません。
今回はその説明をさせていただきます。
理由その1
3Mix-MP療法は抗生物質によってむし歯になった箇所を無菌状態にする方法です。よって菌を駆除することは理屈上、可能だと思います。しかし、むし歯になったところは細菌だけでなく、細菌が作った毒や他の汚物も多く含んでおります。しかしこの3Mix-MP療法はこのような異物・汚物を残したまま詰めてしまう方法です。私は身体にとって毒となるものをそのまま残して詰めるのは良くないと思います。
理由その2
主に深いむし歯で歯の神経まで達してしまった場合に、なんとか歯の神経を保存する歯髄保存療法でこの3Mix-MP療法が使われておりますが、同じ目的で既にアメリカではきちんと国の認可をとった材料・治療法が存在しております。目的・結果が同じなら、国や学会が認めているものを採用すべきだと思い、
林歯科診療所では歯髄保存療法にDoc's best cementを使用しております。
理由その3
3Mix-MP療法は、毎日使用薬剤の調合が必要になります。そのため、あまった材料は無駄になりますし、その手間たるや大変です。
林歯科診療所では患者様の安全と生命を守るために感染予防対策に多くの労力を割いており、3Mix-MP療法の調合作業で時間を割く時間があるのなら、さらにレベルの高い感染予防対策を行ったほうが患者様の利益に繋がると思います。
理由その4
上記の理由を差し置いても、歯髄保存療法のみの目的でこの3Mix-MP療法を用いるならば、まだ医学的に許せるとは思います。しかし、もっとひどいむし歯になったときに用いる根管治療にもこの3Mix-MP療法を利用する動きがあり、マスコミも大きく取り上げました。しかし、3Mix-MP療法に用いる薬剤は抗生物質です。抗生物質の使用に当たっての大原則はなるべく短期間で作用させることです。長期間になればなるほど抗生物質が効かなくなる耐性菌が出現するリスクがあります。この3Mix-MP療法は抗生物質を永久に体内に入れておく治療法で、耐性菌による生命の危険を考えると好ましくないと思います。またアメリカの根管治療についての学会はガイドラインでこのような治療法を禁止しています。
理由その5
3Mix-MP療法はその都度薬を調合しなければなりません。そのことは薬の保存状態によったり調合の精度などによって薬品の効能が安定しない可能性がかなり残ります。また、この抗生物質を永久に歯の中に閉じ込めるわけですが、この調合された製剤自体には全く接着性や強度がありません。この薬品の上からごく薄く接着性のレジンで覆うわけですが、歯にかかる力は強大でごく薄いレジンでは簡単に割れてしまうことが多々あります。割れてしまえば、歯に重篤な感染を引き起こす可能性があり、推奨できません。
もし、マスコミの偏った報道をそのまま信じられて3Mix-MP療法を行っている歯科医院を探されていらっしゃる方は一度、上記の内容をよくお読みになった上でご判断ください。もし、私が治療を受ける身なら絶対にやって欲しくない治療法です。
当院での歯髄保存療法の詳細につきましては、当院ホームページの
歯髄保存療法のページをご覧ください。